ユング心理学の世界へようこそ

感受性が強かった少年時代

スイスの豊かな自然の中で育ったユングですが、
「田舎の純朴な少年」とは程遠い、

鋭い感受性を持った子供だったようです。

 

霊感が強かったという母方の家系の影響もあるのでしょうが、
おそらく、両親が不仲だったことも影響していたのでしょう。

 

幼いながらもキリスト教の教えに疑問を感じたり、
ライン川の滝から流れ落ちてきた水死体に興味を示したり、

墓地での埋葬やキリスト教の祈りの際の言葉に強い不安を感じたり…。

 

普通の子供ならば何も感じないような場面で、
強い好奇心や不安を感じたりすることが多かったようですね。

 

「夢」についても然りで、
普通の子供ならばすぐに忘れてしまうような夢に特別な意味を見出したり、

強い恐怖を感じて誰にも言えなかったりする一面もあったようです。

 

 

誰にも語らなかった「人食い」の夢

「夢分析」といえば、同じ心理学者でも
ジークムント・フロイトの印象が強いでしょう。

 

しかし、ユング心理学でも「夢」が持つ意味は重要視されていたのです。
治療においても、患者が見た「夢」の内容を

非常に大切なものとして扱っていました。
夢について語り合うことでその人の心の中に潜む隠れた気持ちを顕在化させ、

患者がより自分らしい生き方をできるようになるための
手助けをしていたのです。

 

そんなユングですが、
幼少期に恐ろしい夢体験をしたことがあったのだとか。

それは、恐ろしい「人食い」の夢です。

 

まだ3,4歳の頃だったそうですが、地下の洞窟の奥に、
天井まで達するほどの巨大な肉の棒が

口を開けて座っていたという夢だったそうです。
しかも、その夢の後半には、母親の

「あれは人食いだよ」という声が聞こえ、
ユングの恐怖心を煽ったのだとか。

 

当時はその棒が一体何であるのか分からなかったそうですが、
後年になって、

「あれは男性の性器であって、ファロス(男根神)の表れだった」
…ということに気がついたようです。

 

ファロスは、世界各地で「神聖なもの」として崇められている神。
ユングはこの男根神に、

キリスト教とは異なる「異教的な」イメージを感じて
強い恐怖を覚えたのだそうです。

 

あまり宗教心に厚くない我々日本人からすれば、
ちょっと理解しがたい感覚なのですが…。

 

とにかく、ユングが非常に多感で
扱いにくい(笑)子供であったことがよく分かるエピソードだと思います。

両親との関係

「子供らしくない」子供だったユングですが…(笑)。

 

男根神の夢のエピソードでも分かるように、
母親に対して恐怖心を持っていたようなところがあったようです。

どうやら彼の母親には二つの人格があったようで、
「親しみやすく愉快な女性」「不気味で得体の知れない女性」の狭間で

ユングは混乱していたと考えられます。

 

特に後者の人格が出てくると、
強い口調で物事の核心をつく発言をすることもあり、

彼は度々ショックを受けていたのだとか。

 

母とのこのような微妙な関係は、
彼の女性観を歪ませる一因にもなっており、

青年期までは恋愛に対してもなかなか積極的になれなかったようです。

 

一方の父親も、息子にとっては
あまり頼りにならない存在だったみたいですね。

何か質問しても、納得のいく答えを返してくれなかったようです。

 

ユングを生涯に渡って苦しめた
「神がいるのに、どうしてこの世は

これほどまでに恐ろしいことや悲惨なことで満ちているのか」
という疑問についても、父親は全く頼りにならなかったよう。

 

そんな父親に対して失望し、不満や怒り、
哀れみまで感じるようになっていたのです。

どうやら、自分にとって本当の意味で「父親」と思える人はいない
とまで思っていたようですね。

 

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