基本は「対面」による対話
人と話をする時、その相手によって「居心地の良い」姿勢って違いますよね。
例えば、家族や親しい友人、恋人と話すなら、
ソファーにゆったり腰かけてor寝転んだ姿でリラックスしながら。
目上の人と話すなら、背筋を伸ばしてイスに浅く腰かけて…等々。
ユングは、この「姿勢」も治療効果に大きな影響を及ぼすと考えました。
師であるフロイトが
「患者を寝椅子に寝かせて頭の中に浮かんだことを自由に話すように促す」
…というスタイルであったのに対して、ユングのカウンセリングでは、
患者と治療者は向かい合って座ります。
治療者と患者の対等な対話を重んじていたんですね。
確かに、病院に行って、
自分が診察台に寝転んだ状態で医師の話を聴いていると、
「あ〜、自分は患者なんだなあ」
という“病人意識”みたいなものが強められる気がします。
逆に、医師の目の前のイスに座って話をしていると、
「気になることはどんどん質問しなくちゃ」
と治療に積極的な気分になります。
また、姿勢だけではなくカウンセリングの頻度にも特徴があり、
ユング派ではカウンセリングを多くても週に1〜2回に留めています。
(フロイトは週に4〜5回行っていました)
自分自身と対話する時間を多く持たせることで、
自分自身で問題を解決する力を身につけさせようとしていたことが伺えます。
その人に合った治療法を重視する
ユングは、
「うつ病には○○療法が最適である」「精神分裂病なら△△療法に決まっている」
…といった限定的な考え方を好みませんでした。
というのも、自身の臨床経験から、
同じ病気の患者に同じ療法を施したとしても、
100%成功するわけではないことをよく分かっていたからです。
だからこそ彼のカウンセリングでは、
患者1人1人との対話を重視していたわけです。
対話を通じて、その人に合った療法を模索していたわけですね。
つまり、同じうつ病でも、
「Aさんには○○療法」「Bさんには△△療法が合うな」
と人に合わせて治療法を使い分けていたのです。
ユングによれば、「治癒は患者の中から自然に芽生えてくるもの」であって、
「心理療法は人間の数ほど多様なもの」
だからこそ、治療はできる限り個別的であるべきだと考えていたのです。
こうした治療方針を確立した背景には、
自身が経験した患者とのやりとりがありました。
対話を通じて患者の空想の世界を共有し、
それをバカにしたり否定したりすることなく受け入れ、
また自らもその世界に入り込んで共に考える。
こうした個別的なプロセスが、
いかに永続的な治療効果をもたらすかを知っていたのです。
弁証法的手続き
ユングのカウンセリングの特徴として、「弁証法的プロセス」があります。
「弁証法」といえば、哲学者であるヘーゲルが有名ですが…。
カウンセリングにおける弁証法とは、ごく簡単に言うと
「治療者と患者の反応を積み重ねることによって、新しい発見があったり、
真実に近づいたり…と、お互いを高め合ったり深め合ったりしていく過程」
患者が治癒するというだけではなく、
治療者もまた成長していくという相互作用が特徴的なんです。
確かに、「心」という曖昧なものを対象として対話するわけですから、
治療者だって何らかの影響を受けるハズですよね。
ユング派のカウンセリングでは、
この「相互作用」を非常に大切にしていたのです。
病院に行くと、たまに、
やけに偉そうで一方的な医師に当たることがありますが、
ユング派のカウンセリングの心得を見習って欲しいものですね!