ユングとフロイトの考え方の違いとは?
夢分析といえば、フロイトが有名ですよね。
しかし、実は同じようにユングもまた、
「夢」を非常に重要視していました。
とはいえ、同じ夢分析でも、両者の夢に対する捉え方は異なっています。
フロイトは、夢に表れるものは
ことごとく「性的なもの」に関連づけたことが印象的ですよね。
例えば、傘や杖、ペン、鉛筆といった
「棒」状のものは全て男性器の象徴。
箱や靴など、「容器」状のものは全て女性器として解釈していたんです。
ドアなんかも女性器の象徴ですね。
確かに、そう言われればそういうイメージにも見えてきますけど…(苦笑)
ユングを含め、他の心理学者も、
フロイトの夢分析の考え方には疑問を抱いていたようですね。
ユングの場合は、単に性的なものに帰するのではなく、
その夢をより多角的な角度から分析するよう試みました。
夢に現れた物は、本人とどんな関わりがあるのか?
本人の過去と何か関連性があるのかないのか?
本人以外のものとの関係は?
世間ではどんな用途に使われているものなのか…?
こうして考えてみると、一つの夢から色んなことが連想されますよね。
ユングが行ったこのような夢分析は、「拡充法」とも呼ばれています。
夢には何が表れる?
相談者との対話を通じて、夢に現れた物や人、出来事の意味を考えていく。
それが、ユングの「夢分析」のスタイルでした。
筆者も夢日記をつけていたことがありますが、夢って面白いものですよね。
だんだん、内容をよく覚えていられるようになったり、
前夜の続きを見られるようになったりするんですから!
それに、一つのテーマに沿った内容が繰り返されていることに気づいたりします。
最初はなんだかよく分からない支離滅裂な内容で、ただただ、
「怖い」とか「不安だ」とかいった
感情の記憶だけが残るような夢だったのが、
徐々にしっかりとしたストーリーができていくんです。
例えば、真っ暗闇を「怖いよ〜」と思いながら歩いていただけだったのが、
その次には猛獣と闘う内容になり、
やがてその場所(どこだかハッキリわからない)から立ち去っていく…
といった具合。
これは、自分の中にある“恐れ”の感情や“迷い”を克服して、
自立していくテーマとも解釈できるものです。
筆者はよくこのパターンの夢を観ますので、
夢分析の観点から言うと
何かから自立しようとしていることの表れなのかもしれません。
夢分析のプロセス
夢分析を使った心理療法では、前述したような、
夢の「テーマ」が少しずつ進行していく様子を見守ることが
大切だとユングは言います。
例えば、思春期の頃のユングのように
「女性とうまく付き合えない」という悩みを抱えた男性の場合。
「ステージの上で歌う華やかな女性を遠くから観ている」
「赤ちゃんを抱いた優しそうな女性を遠くから眺めている」
…といったエピソードが夢に表れるなら、
それは女性を理想化し過ぎている状態。
赤ちゃんのように女性に優しくして欲しいという願望がありながら、
女性を必要以上に理想化しているために
なかなかうまく近づけないと解釈されます。
心理療法では、ここで、その人の女性像についてじっくり話し合います。
これにより、
「自分が女性に対して何を求めているのか」、そして、
自分自身が常に受け身的であることに気づくことができるでしょう。
そうこうしていると、徐々に夢のテーマも進行し、
今度は女性を犯したり暴力を振るったり…
といったエピソードが表れています。
これは、今まで抑圧していた性的な欲求が表れてきた証拠。
その夢に対して罪悪感を持ってしまうかもしれませんが、
抑え込んでいた感情を表に出せるようになったことは、
自分の中での女性との距離感が変わってきたということ。
決して悪い兆候ではありません。
たかが夢、されど夢。
無意識からの声との対話を繰り返していくうちに、
相談者の内面は少しずつ変わっていくでしょう。
こうしたやりとりを続けていくうちに、
自分が女性に対して求めてきた理不尽な理想に気づき、
現実での女性に対する態度も変わってくるハズです。