人にはみんな、「影」の部分がある
誰かの特徴を表現する時、私たちはよく、
「明るい・暗い」
「感じが良い・悪い」
「真面目・チャラチャラしてる」
「優しい・厳しい」
「大胆・慎重」
…といった具合に、2つに分類して考えがちです。
でも、大勢で会う場合と、2人で会う場合とで
雰囲気が変わる人っていませんか?
みんなから「明るい」と言われている人が、
2人きりになると急に無口になったり、
誰にでも優しいハズの人が、困っている人を見かけても無視したりとか。
慎重で石橋を叩いても渡らないイメージの人が、ある時、
とんでもなく大胆な行動に出て人々を驚かせたり…。
こうして考えてみれば、
人には誰でも「二面性」があることに気づくと思います。
太陽の光が当たれば影ができるように、
人間の心の中にも「日の当たる場所」と「影」の部分があります。
そして、太陽の光が強ければ強いほど、
影の部分は濃くなって表れるのです。
ユングはこのような心の在り様に注目し、私たちは常に
「正反対の方向性」を「影」として内在していることを指摘しました。
ユングによれば、両方の要素を同時に認識するのは難しいのだとか。
結果としては、どちらか片方を「抑えつける」ことになってしまうため、
周りの人からはどちらか片方のイメージでとらえられがちなのです。
「嫌い」なあの人は、もう一人の自分!?
私たちはみんな、自分の中に「影」の部分を持っていますが、
普段はそれを自分でも意識できていない場合が多いようです。
確かに筆者も、自分の中の
「小さなことでウジウジと悩む自分」は認めたくありませんし、
人の不幸を「ざまあみろ」と思ってしまう自分は排除してしまいたいです。
でも、実際は、完全に明るい人間もいなければ、
100%人の幸せだけを願える人もいないでしょう。
この「影」の部分をつきつけられるのは、
「他人」という鏡を見た時だとユングは言います。
例えば、暗くてウジウジした人をみてイラッとしたり、
思ったことをストレートに口にする人に対して
不快な気持ちになったりすることってありませんか?
それは、ズバリ、その人があなたの中の「影」を映し出しているから。
相手の中に、自分が抑え込んでいるもう一人の自分を
「投影」することで、私たちの感情は刺激されます。
投影されている相手の性格や人格なんて、全く関係ありません。
ただただ、自分が勝手に反応しているだけ。
嫌われたほうは、たまったもんではありません(笑)
しかし、この「投影」は、
「本当の自分」に気づくチャンスと考えることもできるでしょう。
相手の何が気に入らないのかを突き詰めて考えていけば、
自分が相手に投影している自分自身の「影」が見えてくるハズです。
「UFO」に投影した願望
ユング心理学において、「投影」は重要なキーワードの一つ。
ここでは、ちょっと面白い例をご紹介しましょう。
ユングといえば
「UFO」の研究にも興味を持っていたことが知られていますが、
彼によれば、UFOの目撃は
「不安から救われたい」という願望が投影されているものなのだとか。
2度に渡る世界大戦を経て、
世界的に出口の見えない不安感に包まれていた当時、
「誰かに救って欲しい」という救世主願望が
UFOという形になって表れたのだというのです。
今でこそ、奇想天外な形をしたUFO目撃談が増えてきていますが、
当時の目撃情報のほとんどが「円型」。
これは、仏教の瞑想に使われる「マンダラ」と同じような意味合いがあり、
全体性や統合を象徴しているものではないかと彼は考えていたのです。
単なる幻覚だとか夢幻として片付けず、
そこに人々が抱える心理的な問題を関連づけて考察するあたり、
さすがユングです!