ユング心理学の世界へようこそ

日本でのユング派第一人者といえば…

心理学をかじったことがある方なら、「ユング派分析家」という言葉を
一度ならずとも何度も耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 

ユング派分析家とは、その名の通り、
ユングが確立した技法を用いて心のケアにあたるカウンセラーのこと。

とはいえ、単にユングの著書で勉強したからといって
誰でも「ユング派」を名乗れるかといえばそうではありません。

実は、れっきとした資格があります。
(この資格は、心理療法のプロ免許である臨床心理士とはまったくの別モノです)

 

日本で最初にユング派分析家の資格を取得した人物としては、
京都大学の河合隼雄先生が有名ですね。

河合先生は、1965年に、スイスのチューリッヒにある
「カール・グスタフ・ユング研究所」において見事、

分析家の資格を取得しています。

 

日本においてユング心理学の人気が高いのは、
河合先生の尽力の賜物と言っても過言ではありません。

特に、箱庭療法の普及には、かなりの貢献をされているようですね。

 

河合先生は、日本人と西洋人の心の構造に違いあること
指摘したことでも知られていて、

ユング心理学を日本人に当てはまる形に修正した人物でもあります。

ユング派分析家になるには?

1965年に河合準雄先生がユング派分析家の資格を取得して以来、
現在まで(2011年)に資格を取った日本人は数十名ほど。

(2008年時点では50名以下)
かなり取得が難しい資格であることが伺えます。

 

ユング派分析家の資格を取得するには、まず、
スイスのチューリッヒにあるユング研究所、またはそれと同等の機関で

「候補生」として厳しい訓練を受けなければなりません。
(所在地:ベルン、ジュネーブ、バーゼル、ローザンヌ、ロカルノ、ルガーノ)

 

もちろんそれで終わりではなく、
そこで試験を受けてパスすればさらなる訓練が待っています。

(この訓練は、日本でも受けられます)

ユング派分析家へのSTEP

◆STEP1 分析家候補生(Training Candidate)になる◆
候補生といえども、

「年齢26歳以上で、大学院修士号以上の学歴と、社会経験、
そして50時間の分析(を受けた)経験があること」

…という条件つきです。

 

この候補生になるためにも試験が必要で、問われる内容は、
知識量ではなく分析家としての適性や資質に関すること。

ひとりの受験者に対し、3人のプロの分析家がみっちり面接して
「向いているかどうか」を判断します。

これはもう、その人の資質ですから、
本人にどれだけ意欲があってもダメなものはダメと諦めるしかなさそう…。

 

1時間×2回×面接官3人=計6時間の濃い〜面接に、
あなたは耐えられますか!?(笑)

しかも、3人が全員一致で許可しなければ、「候補生」にもなれないのです。
想像以上にシビアな世界なんですね。。

 

※ただし、1回落ちても、
「もう少し、いろいろな社会経験を積んでから受けてみたら?」

とチャンスをもらえることもあるようです。
実際、10年の年月を経て再チャレンジして合格したという方もいるようですよ◎

 

 

◆STEP2 分析家候補生として訓練する◆
ユング派分析家の「候補生」としての訓練は、とにかく

「自分が分析を受けること」がメインになります。
知識はあって当たり前。

それよりも大切なことは、自分自身が分析を受けて、
「自分の知らなかった自分」を少しでも多く知ることです。

(これを「教育分析」と呼びます)

 

簡単なようですが、これは精神的にかなりしんどいことです。
場合によっては、認めたくない自分の一面を

受け入れざるを得ないことだってあり得ますから…。

 

この分析は担当の分析家と一対一で進められていきますので、
かなり濃いお付き合いとなります。

分析家は、生徒を1人のクライエントとして扱いますので、
いわゆる臨床の場面で行われる分析となんら変わりはありません。

 

一応、カリキュラムの一環として講義やセミナーもあるようですが、
さほど重要視されていません。

あくまで任意であって、
出席を義務づけられているものでもありませんし…。

知識よりも資質重視であることがよく分かりますね。

 

 

◆STEP3 資格候補生(Diploma Candidate)になる◆
以下の条件を満たせば、晴れて「資格候補生」に昇格できます。

 

・「分析家候補生」として、最低2年間在籍する。

 

・教育分析を最低150時間受ける。

 

・最低ひとつ、論文を書く。

 

・8科目の試験に合格する。
(ユング心理学一般・夢分析理論・発達心理学・神経症理論

精神病理学・宗教学・民俗学・おとぎ話:それぞれ口頭試問)

 

・臨床現場で規定の期間の実習をする。(精神科医や心理士は除外)

 

・再度、面接を受けて合格すること(3人の面接官×各1時間)

 

 

◆STEP4 資格候補生として訓練する◆
この段階でも、やはり分析家候補生と同様、

「分析を受けること」メインになります。

 

ただ、STEP2と異なるのは、自分が分析を受けるだけではなく、今度は
自分がクライエントに対して「分析を行うこと」

含まれているということ。
まだプロではありませんので、

スーパーバイザーの指導を受けながらの訓練となります。

 

 

◆STEP5 資格取得◆
次の条件をクリアすれば、晴れてユング派分析家に♪

道のりは長かったですね…(最低でも4年はかかります)

 

ちなみに、4年で卒業する人はほとんどいないのだとか。
それほど、ユング派分析家への道は奥が深いのです。

 

・資格候補生として、最低2年間在籍する。

 

・教育分析を最低300時間受ける。
(分析家候補生のときに受けたものも含む)

 

・最低300時間、コントロールケースを行う。

 

・最低80時間、スーパービジョン(資質向上のための教育指導)を受ける。

 

・最低60回、症例検討会に出席する。

 

・再度、面接を受けて合格すること(3人の面接官×各1時間)

 

・学科試験に合格すること。

 

・卒業論文を書いて合格すること。

 

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