ユング心理学の世界へようこそ

自己実現を目指して生まれた新しい心理学

知らず知らずのうちに自分の内面に押しやられてしまった面も含めて、
自分自身を認め、自分らしく生きる…

 

それが、ユングの言うところの「自己実現」です。

 

この考え方は、1960年代の米国で急速に支持されるようになります。
なぜなら、当時のアメリカでは、

大学紛争や反戦運動、ウーマン・リブ運動などが盛んとなり、
人間性の解放(すなわち、社会的規範による抑圧からの解放)が

叫ばれる時代だったからです。

 

このような流れで生まれたのが、「人間性心理学」という新しい学問。
代表的な心理学者としては、

カール・ランソム・ロジャーズやアブラハム・マズローらがいます。

 

●ロジャースの代表的な理論
「人間の変容は、来談者と治療者の出会いによって達成される」

 

●マズローの代表的な理論
「人が生まれつき持っている能力を発揮するのが自己実現である」

トランスパーソナル心理学の誕生

ユング心理学の理論、そして、ロジャースやマズローらによる
「人間性心理学」の影響を受けて誕生したのが、

「トランスパーソナル心理学」です。

 

トランスパーソナルとは、読んで字のごとく、
「個を超えた」という意味。

「個を超える」という言葉には、次の2つの意味があります。

 

◆水平方向のつながり
対話を通じて、性や民族の違いを超えて

水平方向につながりを広げていこうという考え方。

 

◆垂直方向のつながり
瞑想やヨガ、禅修行やシャーマニズムといった内的な体験を通じて、

自分の身体や感覚に直接アプローチすること。
言葉や意識の働きを超えて、無意識でつながろうというアプローチ法。

 

 

…つまり、横にも縦にも広くみんなとつながろうぜ!!
という考え方ですね。(ちょっと乱暴な言い方ですが…)

 

垂直方向につながることは、神話や古典文学といった
古くから伝わる「イメージの世界」を大切にすることにも

つながっていきます。

 

これはつまり、ユングが提唱した
「集合的無意識」にも関係する考え方ですよね。

トランスパーソナル心理学の特徴

トランスパーソナル心理学の最大の特徴は、東洋的瞑想を重視したこと。

 

具体的な方法としては、瞑想やヨガ、禅修行、気功法、太極拳…等々。
これは、「垂直方向のつながり」にカテゴライズされ、

言葉を介さずに自分自身の身体や内面に直接アプローチする方法です。

 

実は、この点については、
ユングとはちょっと考え方が違っているところ。

ユングは、このように言葉を介さずに内面にアプローチする方法は
あまり好みませんでした。

 

なぜならば、意識的に考える力や、
他者と対話する力を弱めてしまうからです。

 

しかし、ユングが活躍した時代と比べて、
急激に西洋的な合理主義思想が拡大した現代にあっては、

水平方向に浅いつながりは拡大しつつも
垂直方向の深いつながりは弱くなっていく一方です。

 

こうした状況に警鐘を鳴らす学者も多く、
東洋的思想を重要視する声も多くなっているのです。

 

加えて、ユングの時代よりも東洋的な思想に関する研究が進み、
人々に受け入れられやすくなっていることもまた事実。

 

トランスパーソナル心理学が東洋的な思想を大胆に取り入れている背景には、
このような「時代の変化」も大きく影響しているようですね。

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