ユング心理学の基礎
「コンプレックス」、「内向と外向」、「共時性」…
ユング心理学には、聞き覚えのあるキーワードがたくさん出てきます。
本来の意味が、日常生活で使われる意味と
少々異なっているものもありますので、
ここで正しく理解しましょう。
これらのキーワードを学んでいくうちに、あなたもきっと、
ユング心理学の面白さ&奥深さに目覚めるハズです!
ユング心理学の基礎エントリー一覧
- ユング心理学とは?
- 心理学という学問とあまり縁がない方でも、「カール・グスタフ・ユング」という心理学者の名前はご存知なのではないでしょうか?ユング(1875〜1961)は、スイスの精神科医・心理学者です。「夢分析」や「オカルト」、「宗教」といったキーワードと関わりが深い人物ということもあり、ともすれば「なんか怪しい!」といった先入観をもたれやすいのですが…彼が提唱した理論は、現在でも心理療法の現場に生かされています。ユングの心理学は、「深層心理学」の一種に分類されるもので、「人間の心の働きは意識のコントロールや認識...
- コンプレックスの理論
- 「私は目が一重なのがコンプレックスで…」「僕のコンプレックスは、大学に行けなかったことです」…こんな話、みなさんもよく耳にしませんか?あるいは、みなさん自身も色んな場面で「コンプレックス」という言葉を口に出しているのではないでしょうか。一般的には、「劣等感」と同じ意味で使われることが多いと思います。しかし、ユングの定義によれば、必ずしも劣等感とイコールではないようです。ユングのいうコンプレックスとは、「感情に色付けされた心的複合体」…ちょっと難しいですね(笑)。例えば、ある特定の事柄について極端...
- 私たちが持つ「影」を科学する
- 人の性格を表現する時、ともすれば私たち「明るい・暗い」「真面目・チャラチャラしてる」「優しい・厳しい」「大胆・慎重」…といった具合に、2つのタイプに分けて考えがちです。でも…ちょっと、自分や周りの人のことを考えてみてください。大勢で一緒にいる場面ではみんなから「明るい」と言われている人が、2人きりになると無口になったりすることってありませんか?会社では真面目な人がプライベートでは家族を困らせる放蕩旦那だったり、誰にでも優しい人がある特定の場面では妙に厳しくなってみんなを驚かせたり。小心者で慎重な...
- 私たちの中の「ペルソナ」
- 私たちは、1人の人間でも実に様々な「顔」を持っています。例えば、「親」という顔、「妻or夫」という顔、「○○会社の営業担当」という顔、「○○部の部長」という顔…。私たちは、意識するか否かに関わらず、地位や役割、場面に合わせて態度や行動を変えています。つまり、「役割を演じている」わけです。これが、ユングが提唱した「ペルソナ」です。元々の意味は、古代ローマの古典劇において演者が身につけていた「仮面」。つまり、私たちは普段の生活の中で「仮面」をつけて暮らしているというわけ。面白い発想ですよね(笑)。確...
- 集合的無意識の不思議
- ユング心理学で最もメジャーな概念といえば、「集合的無意識」。心理学以外の分野の本にも度々登場するキーワードですので、みなさんも一度や二度は目にしたことがある言葉ではないでしょうか。これを理解するためには、まずはユング心理学の基礎についてざっくりと知っておく必要があります。まず、「元型」(アーキタイプ)という言葉。これは、人の心の中に普遍的に存在していると考えられる「イメージパターン」です。例えば、ふっくらした体型の女性を象った土偶などに母親的なものを感じるのは、「母親元型」が働くからです。同様に...
- 心が持つ4つの機能
- 「なんとなく好き」「嫌い」で付き合う人を選別したり、「ココがこうだから好き」というこだわりで服を選んだり、「今やらなきゃ後悔する!」という“勘”で思い切った行動を起こしたり…。1人の人間でも、その心の働きはTPOに応じて様々に変化します。でも、人によって“心の動き方”には特徴があるもの。カッと感情的になる傾向が強い人もいれば、常に冷静沈着で、感情を荒立てることなどほとんどない人だっています。ここに目をつけたユングは、さすが!!ユングは、まず、「人の心には4つの働きがある」と考えました。それが、次...
- 「自己実現」とはどういういうことか
- 同じ映画を観たり、同じ小説を読んだりしても、人によって目の付けどころって違うものですよね。登場人物のファッションや、ストーリーの設定など「物理的なもの」ばかりに目が行く人もいれば、登場人物に自分を重ねてそこで湧きあがってくる感情を中心に鑑賞する人もいます。さて、あなたのタイプはどっちでしょう?これはあくまでも一つの例ですが、ユングが定義した「人間のタイプ」論もこの例から考えると非常に分かりやすいと思います。要するに、心のエネルギーが「外側」に向いているのか、自分の「内側」に向いているのかという違...
- ユングといえば「元型論」
- 私たちの身体は、祖先から受け継がれた遺伝子で構成されています。顔や身体付き、体質が親と似ているのは、そのためです。しかし、実は、私たちの心の中にも古代から伝えられてきた要素があるとユングは言います。それが、「元型(アーキタイプ)」です。しかもこれは、「自分の祖先から」というよりは、全人類に普遍的に存在するもの。代表的な元型としては、「太母(グレートマザー)」があります。例えば、日本の縄文土器然り、世界の古代文明の遺跡では「母親」のイメージを象った土偶などが発見させていますよね。女性的な体の曲線を...
- 「共時性」の不思議を科学する
- 私たちの人生には、不思議な「巡り合わせ」が度々起こりますよね。例えば、今まさに会話に登場していた芸能人がテレビでも同じタイミングで現れたり、噂をしていた人から突然電話がかかってきたり、お金が必要な時に限ってATMが故障していたり…。実は筆者にも、苦い経験があります。母から送られてきたリンゴを一つ、腐らせてしまったので捨てたのですが、その翌週に母が乳がんであることが判明したのです。このような出来事は、「これが原因でその出来事が起こった」…と原因と結果の因果関係を説明しづらいところがあります。無理に...
- ただの偶然じゃない!シンクロニシティ
- 「単なる偶然」で片づけてしまうには、あまりにもタイミングが良すぎる出来事ってありますよね。例えば、誰かと一緒にAさんの話をしている時。「あいつ、今頃どうしているのかなあ」という話だったらまだしも、悪口なんかを言っていたところ、その数分後に、Aさんが同じ店に来てしまった!!…なんて経験はありませんか?メールや電話で読んだからAさんが来た、というのであれば分かりますが、こちらからAさんに連絡をしたわけではないのにたまたま本人が現れたという状況は、因果関係は100%説明できないでしょう。これが、ユング...
- ユング心理学とマンダラ
- 実の父親のように慕っていたフロイト先生と学問的な意見の相違で決別した当時のユングは、ちょうど、いわゆる「中年期の危機」にさしかかっていた頃。自分自身の生きざまについて、深く思い悩む日々を送っていたようです。その当時、ユングはよく、円形の絵を描いていたのだとか。当初は、なぜ円を描いてしまうのか自分でもその意味を理解できなかったようですが、精神的に安定している時にはキレイな円が描けるものの、心が不安的な日に描く円はいびつであることに気づき始めます。そしてある時、彼は、自分の描いた円と東洋で瞑想の道具...
- ユング心理学と東洋思想
- 師であるフロイトと決別し、ユングは失意のどん底にありました。そんな中、第一次世界大戦が勃発します。彼も戦争と無関係でいられるハズはなく、スイスに逃れてきた外国兵たちを収容する施設の軍医を命ぜられます。決して、明るい毎日ではなかったことでしょう。当時のユングは、毎日ノートに「円」を描くことを日課にしていたのだとか。試しにみなさんも、鉛筆で紙に円を描いてみてください。「うまく描けない」と苛立つと、ますます円の形は歪んでいきませんか?ユングの体験によれば、心が不安定な時にはいびつな円になり、心が安定し...
- 全ての基本は「対話」にあり
- 誰かと話している時、「なんとなくかみ合わないな」…という違和感を覚えることってありませんか?反対に、楽しくって話題が尽きなくなることもありますよね。それは、一体、何の違いによるものなのでしょうか。もちろん、両者の性別の違いや立場の違い、その時の状況にも左右されるでしょう。しかし、「心の在り方」も大きな要因の一つ。どちらかが一方的に主張したり、上から目線だったり、単に情報だけをだらだらと並べていたり…。心と心が向き合っていなければ、お互いにそこから喜びを見出すことも、新しい発見が生まれることもない...
- 「転移」と「逆転移」
- ユング派心理療法のカウンセリングにおいて、一つのキーワードとなっているのが「転移」と「逆転移」。後者の方は、前者の逆かな〜となんとなく分かると思いますが…。「転移」って一体、どのような現象を言うのでしょうか。もちろん、ガンの転移とは違いますよ。「転移」とは、治療を受ける側である来談者が治療者との間に抱くある種の感情のこと。具体的には、父親や母親、兄弟や教師…といった、それまでの人生で重要だった人物との関係を重ね合わせることが多いようです。もちろん、最初はそんな感情は抱きません。転移が生じるのは、...
- 自己と個性化の過程
- 人の「心」の構造を、イラストで表してみてください。…そう言われて、みなさんはどんなイラストを描くでしょうか?単純に大きなハート型を描く人が多いのでは?(笑)コレって、なかなか難しい問いですよね。私たちが何かを「思ったり」「感じたり」できるのは、全て脳の働きによるもの…。そう言いきってしまうと、「じゃあ、心なんてどこにもないのか?」ということになってしまいます。確かに、解剖学的には「心」という臓器は存在しませんよね。しかし、私たちの中に「心」というものがあって、それが私たちを動かす原動力になってい...
- ユングの「タイプ論」
- 友達や恋人と同じ映画を観に行った時、終わった後の感想がお互いにまるで違っていて驚いたという経験はないでしょうか?登場人物のファッションやメイク、ロケ現場の町並みなど「物理的なもの」ばかりに目が行く人もいれば、登場人物に自分を重ねてそこで湧きあがってくる感情を中心に鑑賞する人もいます。さて、あなたはどちら?同じことは、TVドラマや小説などでも起こり得ることですよね。ユングが定義した人間の「タイプ論」は、こうした例から考えると非常に分かりやすいと思います。ユングのタイプ論では、心のエネルギーが「外側...
- ユングが提唱する「個性化」とは?
- ユングによれば、人の心の働きには「思考」「感情」「感覚」「直観」という4つの働きがあるのだとか。そのうち、どの要素が最も強く働くかによって、その人の「タイプ」が分かるのだといいます。例えば…物事を論理的にとらえる機能は「思考」。「好き・嫌い」で判断する機能は「感情」。物事を、ありのままの形で受け止める機能は「感覚」。パッと本質的なものがひらめく機能は「直観」です。どうでしょうか、あなたはどの機能が優位ですか?ここで大事なのは、自分の中のあまり発揮されていない機能を見極めること。得意なことは自覚し...
- ユングが言う「永遠の少年」とは?
- ユングが提唱した理論、「元型(アーキタイプ)」の一つに、「永遠の少年」という表象(イメージ)があります。これは、簡単に言うと、すでに成人して“いい年”になっているにも関わらず心理状態が思春期止まりの人間のこと。16、17歳ならば普通であるような幼さ、思考を、ハタチ過ぎてもズルズルと引きずっているような人です。この「永遠の少年」とは、もともとは古代ギリシャの神に由来する言葉。成人を迎える前に亡くなったオヴィデイウスという神が、太母(グレートマザー)の子宮のなかで再生し、少年として再びこの世に生まれ...
- 老賢人とは?
- 昔話などを読んでいると、必ずと言って良いほど、人生を悟りきった「長老」のような人物が登場しますよね。助言や忠告を与えて、主人公を正しい方向へ導いてくれる存在…。それが、ユングが言うところの老賢人(オールド・ワイズ・マン)です。これは、男性にとっての「成長の最終的到達点」とも言われる段階。この老賢人は「父親元型」でもあり、経験の知恵や理性の表れでもあります。簡単に言うと、人生の悟りを開いたような状態ですね。人間、長く生きていれば、経験の分だけ知識も知恵も深くなりますから(笑)。「仙人」のような境地...
- 「母殺し」が象徴するもの
- ユング心理学の中に、「母親殺し」というドぎつい表現が出てきます。「えっ、ユングって少年犯罪の心理にも詳しいの?」…と誤解してしまう方もいらっしゃるかもしれませんよね(笑)。ユングの言う「母親殺し」は、あくまでも“たとえ”。実際に母親を殺すわけではありません。母親殺しが象徴しているのは、人間の「心理的な成長」、つまり、母親殺し=母離れということになりますね。人間が心理的に成長していくプロセスにおいて、一人前になるためにどうしても克服しなければならないテーマを、ユングは「母殺し」言い方で表現したので...
- 「人生の正午」という考え方
- ユングが残した有名な考え方に「人生の正午」というものがあります。彼は、人生を一日の太陽の運行になぞらえて考え、人生を4つの時期に分けて定義しています。図をご覧いただくと分かりやすいのですが、その考え方でいくと、「人生の正午」とは青年→中年にさしかかる頃ですよね。この時期を、ユングは「転換期」であると捉え、「危機の時期」でもあることを指摘しています。確かに、自分たち自身について考えてみても、この青年→中年の過渡期をうまく乗り越えられなかった人、つまりは「中年になること」をポジティブに受け入れられな...