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コンプレックスとは?

「私は目が一重なのがコンプレックスで…」
「僕のコンプレックスは、大学に行けなかったことです」

 

…こんな話、みなさんもよく耳にしませんか?
あるいは、みなさん自身も色んな場面で

「コンプレックス」という言葉を口に出しているのではないでしょうか。

 

一般的には、「劣等感」と同じ意味で使われることが多いと思います。
しかし、ユングの定義によれば、

必ずしも劣等感とイコールではないようです。

 

ユングのいうコンプレックスとは、
「感情に色付けされた心的複合体」

 

…ちょっと難しいですね(笑)。

 

例えば、ある特定の事柄について極端に感情的になってしまったり、
妙にこだわってしまったり、

意固地になってしまったりすることはありませんか?
他のことなら笑って流せるのに、

そこだけはどうしても気になってしまうというポイント…。

 

これは、「自分は○○の面で劣っている」という
単なる劣等感を通り越して、もっと複雑な心の反応が生じているから。

(例えば、学歴や容姿、経済状況、性、地位などの話題に関して
そのような感情を抱くことが多いようです)

 

そのポイントを他人から指摘されると、それを認められないがゆえに、
感情的になって怒ったり、ますます頑なになってしまったりします。

 

この、自分自身にも言葉ではうまく説明できない複雑な心の反応こそが
ユングの言う「コンプレックス」なのです。

様々なコンプレックス

ユングが提唱した
「感情に色付けされた心的複合体」=コンプレックスには、

様々な種類があります。
ここでは、代表的な例についてご紹介しましょう。

 

 

●父親コンプレックス
父親への敵対心と、「父親にもっと愛されたい」という気持ちとが

複雑に絡み合って生じる心的反応。

 

例:年上の男性に対して妙に反抗的だったり、逆に、
年上の男性に好かれようとして極端に張り切ったりする。

女性の場合は、年上の男性にばかり恋愛感情を抱く。

 

 

●母親コンプレックス
母親はなぜ自分を受け入れてくれないのかという失望・不審感と、

「もっと母親に愛されたい」という気持ちが
複雑に絡み合って生じる心的反応。

 

例:年上の女性に対しておどおどしたり過度に甘えたりする。
また、女性からの束縛や干渉を嫌って敵意に近い感情を抱いたりする。

恋人に自分の母親像を重ねて、
「もっと愛して欲しい」「もっと受け入れて欲しい」

…と愛情を求める一方で、
「束縛されたくない」「どうせ見捨てられるんだ」

「どうして愛してくれないんだ」
…といった失望・敵意・恨みの感情を抱いたりする。この矛盾性が問題。

 

 

●メサイア(救世主)コンプレックス
「自分なんか劣った人間なんだ。生きていても役に立たない人間なんだ」

という自己への過小評価と、
「自分は人を救える力を持った特別な人間なんだ」

という万能感とが入り混じって生じる心的反応。
医師や心理カウンセラー、介護、看護士…等、援助職を志す人は、

このコンプレックスに突き動かされている場合あり。

 

 

●カインコンプレックス
「親からの愛情を独占したい」という気持ちが生みだす、

兄弟・姉妹間の強い敵対感情から生まれる複合体。
旧約聖書の中の「創世記第4章」、

カインとアベルのエピソードに由来している。

 

(兄のカインと弟のアベルがそれぞれ神に供え物を捧げたところ、
神はアベルの供え物だけを喜んだ。

強い嫉妬心に支配されたカインは、弟のアベルに嫉妬して殺害してしまう)

 

具体的には、兄弟のほうが優れていることに関して、
「勉強だけできたって仕方がない」「足が速くたって何の役にも立たない」

などと相手を否定するような反応を示すこと。

コンプレックスを克服するには

コンプレックスをうまく克服できずにいると、
人との会話の中でも突然感情的になってしまったり、

不機嫌な態度をとってしまったりするもの。

 

また、メサイアコンプレックスの場合は、
相手にとってありがた迷惑な行動に出たりするものです。

 

自分の心の問題で、
周囲の人間をも不愉快な気持ちにさせてしまうことがあるというのは…

大人としてはよろしくないですよね(笑)。

 

克服するには、ズバリ、自分との「対話」を大切にすること!
自分の弱さ、自分が何に対してどんな劣等感を抱いているのかを

認めることが第一歩です。

 

「○○さんと話していると、妙にイラッとしてしまう」というのは、
その○○さんがあなたの劣等感を刺激する人だからです。

「ああそうか。○○さんのこういう言葉が、私を刺激しているんだな」
と自覚しない限り、

○○さん=不愉快な人という次元から抜け出すことはできません。
それが仕事上の付き合いだと…苦痛ですよね。

 

でも、これは筆者の経験から言えることですが、

 

「そうか、この人っていつも学歴のことをよく口に出すから、
私はそれが嫌なんだな」

 

「この人は、人を外見で判断するところがあるから、
私はそれが嫌なんだ」

 

…と“イラッとする理由”を自覚するだけでも、
その人との付き合いが楽になるものですよ。

 

自分は学歴のことを言われるのが嫌なんだ。
外見で判断されるのが嫌なんだ。

だから、そういう人と話すのも嫌なんだ…。

 

それが分かると、相手に対するまなざしがちょっと優しくなれる気がするんです。
ああ、不愉快になるのは自分の心に原因があったのね…ってね。

ちょっと、相手に申し訳ないような気持ちになったりして。

 

人間って不思議ですね(笑)

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