「元型」とは?
私たちの身体は、祖先から受け継がれた遺伝子で構成されています。
顔や身体付き、体質が親と似ているのは、そのためです。
しかし、実は、私たちの心の中にも
古代から伝えられてきた要素があるとユングは言います。
それが、「元型(アーキタイプ)」です。
しかもこれは、「自分の祖先から」というよりは、
全人類に普遍的に存在するもの。
代表的な元型としては、「太母(グレートマザー)」があります。
例えば、日本の縄文土器然り、世界の古代文明の遺跡では
「母親」のイメージを象った土偶などが発見させていますよね。
女性的な体の曲線を表現したものであったり、
子供を宿してお腹が膨らんでいる形のものであったり、
パターンは様々ですが…。
共通しているのは、「命を生みだす母親」を表現しているという点です。
国が違えどこのようなイメージが共通しているのは、
人類の心の中に「母親元型」が存在しているからだと
ユングは考えたのです。
同様に「父親」を象徴する元型もあります。
これは、「老賢人」と呼ばれ、
偉大な力で教え導いてくれるイメージを表しています。
私たちの心の中にある「イメージ」
ユングは、私たちの心の深層に普遍的に受け継がれているものとして
「元型」の存在を指摘していましたが、
そのさらに奥深くに
「自己」というイメージパターンがあると考えていました。
自己、つまり「Self(セルフ)」ですね。
ユングは、この「自己」こそが心の中心であると考えました。
「自己」は、心の中に何かを抑え込んでいる時や、
人生に意味を見いだせずに苦しんでいる時などに、
自分で自分の人生に意味を与えることができる機能です。
だからこそ、自己が十分に機能することができれば、
より自分らしく生きられるのではないかとユングは言うのです。
…ちょっと抽象的でわかりにくいでしょうか?
極端な例を挙げれば、「悟り」や「解脱」といった宗教的境地も
自己の働きが影響しています。
イエス像や仏像の背後にある「光の輪」は、
まさにこの「自己」をイメージしたものなんですね。
確かに、「悟り」とはまではいかなくても、
何かについて悩み抜いた揚げ句にパッと前向きな答えが出て
気持ちがスッキリすることってありますよね。
それも、「自己」という元型の働きによるものだと
言ってしまって良いと思います。
「アニマ」と「アニムス」
見た目は無骨な感じの男性が、意外とロマンティックだったり、
華奢な女性が周りが驚くような男前な発言をすることってありますよね(笑)。
これには、ユングが定義するところの
「アニマ」と「アニムス」という元型が関与しています。
●「アニマ」とは
アニマは、男性の中の女性像や女性的な部分のこと。
成長と共に次のような過程で発展していきますので、
どのイメージが強いかによって男性の心の成熟度を知ることができます。
@肉体的なアニマ
内面よりも肉体を求める傾向がある場合はこの段階。
これは、「母親に抱かれたい」というイメージが強いため。
言ってみれば、赤ちゃんみたいなもの?(笑)
女性とのつながりに「体」だけを求める男性は、
この段階から抜け出せていないということです。
Aロマンティックなアニマ
肉体的なつながりよりも、
プラトニックな恋愛を求める傾向がある場合はこの段階。
母親との精神的なつながりを求めているイメージ。
ようやく母親離れしてきたかな?というところでしょうか。
B霊的なアニマ
女性に対して癒しや救済を求めている場合はこの段階です。
具体的には、世界を救う女神のイメージに憧れている場合など。
C知的なアニマ
女性的というよりは、中性的なイメージ。
仏像はこの段階のアニマを象徴しているようです。
●「アニムス」とは
アニマは、女性の中の男性像や男性的な部分のこと。
成長と共に次のような過程で発展していきますので、
どのイメージが強いかによって女性の心の成熟度を知ることができます。
@力のアニムス
とにかく肉体的な強さを持つ男性に惹かれる傾向があります。
子供がヒーローもののマンガが好きなのと一緒ですね(笑)。
A行為のアニムス
行動力や実行力のある男性像。
このようなイメージを引き受けてくれる男性に惹かれます。
B言葉のアニムス
的確な言葉で人を教え導ける男性像が生じている段階です。
そのような男性に惹かれる傾向があります。
C意味のアニムス
物ごとに何らかの意味を与えて、
精神的に引っ張っていってくれるような男性像です。
現実でも、単に力任せではなく精神的に人を導く
リーダーシップのある男性に魅力を感じるようになります。