ユング心理学の世界へようこそ

「自己」は心の中心

人の「心」の構造を、イラストで表してみてください。

 

…そう言われて、みなさんはどんなイラストを描くでしょうか?
単純に大きなハート型を描く人が多いのでは?(笑)

 

コレって、なかなか難しい問いですよね。
私たちが何かを「思ったり」「感じたり」できるのは、

全て脳の働きによるもの…。
そう言いきってしまうと、

「じゃあ、心なんてどこにもないのか?」ということになってしまいます。

 

確かに、解剖学的には「心」という臓器は存在しませんよね。
しかし、私たちの中に「心」というものがあって、

それが私たちを動かす原動力になっていることもまた事実なのです。

 

心の実体云々は置いておいて…
ここで、ユングが提唱した「心」の構造を観てみましょう。

心の構造

 

イラストをご覧ください。
「無意識」と呼ばれる広い領域があって、その表層に「意識」がある。

そして、その意識の中心には「自我」が。
心全体の中心には「自己」と呼ばれるものがあります。

 

実はこの「自己」こそ、
人が自分らしく生きるために欠かせない要素となるもの。

意識で考えて選んだ行動と、
この「自己」が決定を下して起こす行動とでは、力の入り方が違います。

 

実際、「こうするのが良いみたいだから、そうしておくか」という程度で
始めた物事にはあまり熱も入りませんが、

心の底から「やりたい!」と思うことに対しては
気合の入り方が違いますよね。

 

つまりは、そういうこと。
その人が「より自分らしい自分」「自分が目指す自分」に近づくためには、

この「自己」がしっかり機能していることが大切です。

 

そうでなければ、この人生は
「無意味」で「何の目標もない」ものであり、

惰性で日々を過ごしていることを認めることになってしまいます。

「個性化」と「自己実現」

ユングは、人の心の働きには
「思考」「感情」「感覚」「直観」という4つの働きがあり、

その要素が最も強く働くかによって
その人のタイプが分かると考えました。

 

例えば、物事を論理的にとらえる人は「思考」。
なんでも「好き・嫌い」を基準に考えがちな人は「感情」優位。

物事を、ありのままの形で受け止める人は「感覚」。
その対象から本質的なものがひらめく人は「直観」タイプです。

 

みなさんはいかがでしょうか?

 

自分の中の、良く働く機能と
あまり発揮されていない機能を見極めることは、

「自分自身」を良く知ることにつながっていきます。

 

そして、よく働く機能についてはその才能をさらに磨き、
逆に、あまり働いていない機能については、

よりよく機能するように意識してみる。
こうしたことを繰り返すことによって、より自分らしい自分、

生き生きとした自分に近づいていくことができるのだと
ユングは考えました。

 

これは、「自己」をしっかり機能させることにもつながっていきます。

 

このように自分らしい自分に近づけていく過程を、
ユングは「個性化」「自己実現」の過程として

治療において重要視していました。

心理療法と「個性化」のプロセス

ユングにとっての「心理療法」とは、単に症状を取り除くことではなく、
またにこの「自己実現」のプロセスだったと言っても過言ではありません。

 

「自分は何のために生きているのか分からない」
「これからどうやって生きて行ったら良いのか分からない」

と言う悩みは、突き詰めていけば
「自分らしさが分からない」という問題に突き当たり、

その「自分らしさ」を追求していくことこそが
「自己実現」のプロセスなのです。

 

この自己実現のプロセスを進めていくためには、まずは、
ユングの言う「集合的無意識」のイメージから

自分自身をしっかりと区別することが必要です。

 

集合的無意識とは、例えば、
「父なるもの=怖い、カタイ、威厳のある」

「母なるもの=やわらかい、優しい」
といった先天的なイメージ。

 

誰もが心の中にそのようなイメージパターンを持っていることは確かですが、
全ての男性が怖くて偉そうな人ばかりかといったらそうではありませんよね?

 

逆に、全ての女性があなたを守ってくれる母親のような人とも限りません。
特に最近は、男性よりも女性のほうが怖かったりしますし…

(他人のことは言えませんが…笑)

 

ところが、この先天的なイメージに縛られ、振りまわされていると、
現実世界での男性との関わりに何らかの支障をきたす場合があります。

これが、健全な人間関係の構築を著しく阻害していたり、
その人が持つ可能性を狭めたりしていることが多いのです。

 

だからこそ、まずは、
そのイメージパターンから自分自身を解放させることが必要なんですね。

 

現実、そして自分自身をありのままに受け入れること。
ここから、「個性化」のプロセスが始まっていくのです。

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