ユング心理学の世界へようこそ

1人になれる場所を求めて

人は1人では生きられない…
これは、いまさら筆者が言うまでもないことでしょう。

 

しかし、生きていれば、1人になりたいと思うこともあります。
辛い時、自分が成長しようとしている時、人と距離を取って

1人で自分の内面と向き合うことが必要な時期が誰にでも必ずあるでしょう。

 

ユングにとっては、ちょうど、
お母様が亡くなった頃がそんな時期だったようですね。

1923年にお母様が逝去された後、ユングは
チューリッヒのボーリンゲンというところに土地を買い、

そこに石の塔を建設し始めます。

 

なんと、自らの手で石を積み上げて作ったのだとか。
もともと、精神の治療的な意味合いで塔の模型作りをしていたことが

知られていますが、本物の家まで自分で作ってしまうとは驚きです。

 

ユングはその塔に身を置き、畑を耕したり自分で料理をしたりしながら
思索にふける日々を送ります。

 

後に、本人が分析している通り、
この塔は「母親の子宮」のような場所だったようですね。

幼少の頃から母親に対して違和感や不信感を抱いてきたユングですが、
母の死はその母子関係を見つめ直すきっかけとなったのでしょう。

ユングが体験した臨死体験

心理療法の実践に、講演に…と忙殺されるユングでしたが、
自分で作った塔にいる時間を作っては

自分自身の内面との対話を大切にしていたようです。

 

人間、アウトプットばかりでは精神的に疲弊してしまいます。
筆者もよく分かりますが、

アウトプットとインプットのバランスが崩れると
精神的に疲れを感じたりイライラしたりしてしまいます。

 

そんな時は、飲み会のお誘いを断って自宅にひきこもったり、
図書館の奥でのんびり本を読んだりして

自分1人の時間を大切にするように心がけています。
ユングも、おそらく、そんな状態だったのかな…と。

 

そうは言ってもユングは、
休日も単に塔にひきこもっていたわけではありません(笑)。

実は彼には、「文通」というライフワークがありました。
世界中の人々(例えば、アメリカの先住民の首長)とのやりとりを通して、

自身の理論を深めようというたゆまぬ努力を続けていたのです。

 

東洋人にも西洋人にも共通する心理的構造を発見したユングの功績は、
こうした地道な努力に裏付けられていたんですね。

 

そんな中、ユングはある不思議な体験をします。
それが、「臨死体験」でした。

 

時は第二次世界大戦終結直前の1944年。
転んだことが原因で心臓発作を起こし、昏睡状態になってしまったのです。

 

その時のことを、後に彼は、
「空高く宇宙に漂って、遥か離れた場所から

地球を見降ろしているようなイメージだった」
と語っています。

臨死体験とは?

臨死体験って、TVの企画などでもよく取り上げられるテーマですよね。
一体、どんな現象のことを言うのでしょう。

 

英語では「Near Death Experience」というように、
「死」に近い状態で見られる現象。

心停止の状態から蘇生した人の約4〜18%もの人が
この臨死体験を報告するのだそうです。

 

具体的には、まばゆい光に包まれているというイメージだったり、
自分の過去が走馬灯のようによみがえったり、

ユングのように宇宙から地球を眺めているようなイメージだったり…。

 

不思議なことに、臨死体験を経験した人は、
健康状態が向上する傾向があるのだとか。

精神的にも、価値観が変わったり、
生き方を見直すきっかけになったりしていることから、

ある種の「ヒーリング(癒し)」効果があるとも考えられます。

 

どのようなメカニズムでこの臨死体験現象が起こるのか、
正確にはまだ解明されていませんが、

研究は医師や心理学者の手によって世界規模で行われています。

 

代表的な研究機関としては、ジョン・オーデット氏が設立した
「臨死現象研究会」を前身とする「国際臨死体験研究会(IANDS)」があります。

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