ユング心理学に基づいた占い?
ユングは、いわゆる“星占い”や錬金術といった分野にも
強い興味を示していたことで知られています。
そのため、占星術(星占い)の話題において
ユング心理学が引き合いに出される機会も多いようです。
例えば、「ユング式心理姓名判断」。
これは、単なる“画数”による姓名判断ではなく、
ユング心理学のタイプ論を用いて人の心の奥深くまでを見通す鑑定です。
( 思考型、感情型、感覚型、直観型のそれぞれに
外向的、内向的に分けた8つのタイプ診断)
また、著名な占い師である鏡リュウジさんや
マギー・ハイドさんの著書やコメントにも、
ユングの名前は度々登場していますね。
お二人がコラボしたタロット占いの本も出ています。
彼らの著作を読んでいると、
ともすれば“眉つば”な印象をもたれがちな「占い」の世界の事象も
あたかも心理学=科学で説明がつくかのように思えてきます。
こうした動きを批判的な目で見ている方も少なくありません。
実際のところ、占いは心理学で説明がつくものなのでしょうか?
そもそもユングは、
どのようなスタンスで占いと向き合っていたのでしょう?
自身が展開した心理学が
占いに用いられることを予測していたのでしょうか。
占い=心理学?
鏡さんやハイドさんの著作については、
「自分たちの“インチキ”な占いを正当化するために
ユング心理学を利用している」
という手厳しい批判の声もあるようです。
確かに、一つの「心理学理論」として確立しているユングの理論を
占いの著書に多用するのは、読者に対して、
「占い=科学なんだ」
「ユング心理学の考え方って占いを肯定するものなんだ」
「“占星学=心理学”なんだ」
…という誤解を与えかねません。
しかし、この誤解はちょっと危険。
「占いは心理学だ」と言われれば、
占いの結果がどうあれ言い逃れが可能だからです。
それって、お金を支払ってまで鑑定してもらう意味は
なくなってしまいますよね?
占いの結果が当たっていようが外れていようが、
「それはあなたの気持ちの持ちようがそうさせているんですよ」
…と言われてしまえば
「じゃあ、30分数千円の鑑定料はムダだったの!?」
ということになってしまいます。
しかも、心理面だけが影響する世界なのであれば、
惑星や星座の影響力云々が意味のないことになってしまうでしょう。
それは、占いそのものを否定していることにもなりますよね。
占いで鑑定される「金運」「恋愛運」などに踊らされること自体が
バカバカしい…
…とはいえ、占いが心理学であるという考え方も
ごもっともな面もあります。
例えば、木星は占いの世界では幸運の星として知られていますが、
何か特殊な波動かなにかが発せられているのでしょうか?
残念ながら、現代の科学ではそのような事実は証明されていません。
…とすれば、
「木星はラッキーな星だ」
「幸運の星・木星が味方してくれるから、あなたの今月の運勢は最高だ」
といったフレーズが一種の“暗示”になって、
その人の行動をポジティブな方向に変えている
という可能性が考えられます。
その結果、色んなことが確かに良い方向に動いているとしたら…。
それって、間違いなく「占い=心理学」ですよね(笑)
ユングと占星術
ユング心理学と占いの関係については、
前述したようなまさに“堂々巡り”の議論が繰り返されてきました。
一つだけ確かなことは、ユングは
「なぜ、人間は“星占いが当たった”と感じるのか?」
という点を追及したのであって、
星そのものが人間に与える影響力について研究したわけではありません。
星占いが「当たった!」と感じる人間の心理的メカニズム、
まさにそこに興味を持っていたのです。
そしてそこから生まれたのが、
「共時性(シンクロニシティ)」の考え方だったわけです。
ユングと占いの関係について議論する上で、
この点は非常に重要なポイントです。
くれぐれも、
「ユングは占いを盲信していた」と誤解しないようにご注意を!(笑)